2012年11月12日

選歌は続くよどこまでも!086「片」- 090「舌」

086「片」

片側の靴の底だけすりへって屈託のない日常を抱く (シュンイチ) 

久々の友は片手を軽く上げて葬列後尾に加わり行けり (西中眞二郎) 

片恋をしている君が羨ましいたとえ相手が私としても (流川透明) 

片陰に身を寄せ凌ぐ夏の陽も季の過ぎれば恋しくならん (コバライチ*キコ) 


087「チャンス」

今日こそは旨い!と言わせるチャンスだと 張り切ったのに又指を切る (椋) 

人々の落としたチャンスが流れつく昏き河から綺麗な虹が (小夜こなた) 

ふたたびは来ないチャンスと知りながら東の空を幾たびも見る (紗都子) 

この手には握られたチャンスあるはずできっと生きてる意味あるはずで (希屋の浦) 


088「訂」

全身に訂正印は押されててひとつひとつが思い出である (夏実麦太朗) 

駆除された語彙のことなど思いつつ改訂前の原書にあたる (秋月あまね) 

改訂の意欲はあれど売れそうにないと言われて電話を切りぬ (西中眞二郎) 

改訂という名の減便続けられバスは市民の足ではなくなる (湯山昌樹) 


089「喪」

秋霧の晴れて火葬場まで歩く 喪服の脇は汗ばんでいる (tafots) 

夕飯の段取り想う知り合いの知り合いの知らない人の喪で (青野ことり) 

喪失を余儀なくされし人々の悲しみ今も滲む秋灯 (小夜こなた) 

喪失を失はされる僕たちの周りに欲しいモノが溢れり (桑原憂太郎) 


090「舌」

にが虫を潰したやうな面持ちで巻き舌をんなの英語を聞きぬ (ケンイチ) 

舌先の舐めて飲み込む恋ひとつ萩の下葉の露ぞ甘かる (槐) 

庭つ鳥にわとりの舌尖るとき啼くぞ啼くぞと見ている 啼かぬ (tafots) 

竜舌蘭を教えてくれてありがとう 魚磔、鬣、だいすきでした (黒崎立体) 



※お名前等、間違えがございましたら、申し訳ありません。
 
  
posted by 磯野カヅオ at 02:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 選歌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

選歌は続くよどこまでも!081「秋」- 085「甲」

081「秋」

四季のある国に生まれてまだ秋の正しい使い道を知らない (なまにく) 

蚊を殺し蚊をころしゆく秋の夜は死海の塩を湯船に入れる (梅田啓子) 

秋霧の晴れ着を借りて妹のそれに似るよう目尻を描く (tafots) 

来春の仮契約を期待してまずはメールで秋波を送る (桑原憂太郎) 

   
082「苔」

薄ら日の斑を描きつる苔寺にいにしへびとの影行き交ひぬ (紫苑) 

不安げに苔の線量測る友こんな時代に生きる子どもら (遥) 

朽ち臥して苔生す杜や蝉しぐれ夢と過ぎにし夢の数々 (すずめ) 

憎しみは舌苔のごとくはびこれり きれいなうたはもう歌えない (梅田啓子) 


083「邪」

風邪をひく前に葛根湯飲めと風邪ひいてしまった後に言われる (夏実麦太朗) 

ひまわりを薬罐に刺して8月はわが家を邪宗門と名付ける (柳めぐみ) 

清らかでいたい気持ちが邪魔をして魚と水が区別できない (あみー) 

邪魔になる髪を縛って休日の午後いっしんにタイルを磨く (五十嵐きよみ) 


084「西洋」

西洋のお菓子が青い空ならば和菓子は春の薄墨の色 (ほたる) 

垂乳根の祖母の生まれはたしか西洋酒に浸けた無花果が好き (tafots) 

あの店の西洋菓子を手みやげに詐病の友を気遣いにゆく (はぼき) 

親戚の集まりでまた語られる西洋かぶれの祖父の思い出 (五十嵐きよみ) 


085「甲」

若き日の歌読みおれば年甲斐なき感傷も湧き夜の更けたり (西中眞二郎) 

消しゴムで消せば済むのにおおげさに甲板(デッキ)ブラシを持ち出すからだ (佐竹弓彦) 

真っ先に冬が降り立つ手の甲はきっと君からするりと逃げる (ワンコ山田) 

甲高な足の娘は季節ごとシンデレラにはなれないと泣く (津野) 



※お名前等、間違えがございましたら、申し訳ありません。
 
  
posted by 磯野カヅオ at 00:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 選歌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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