2008年07月27日

斎藤茂吉のこと(茂吉編)。

今日は、斎藤茂吉のこと。

斎藤茂吉の略歴については"斎藤編"をご覧ください。

○公園の石の階より長崎の街を見にけりさるすべりのはな(『つゆじも』)
○あやしみて人はおもふな年老いしシヨオペンハウエル笛ふきしかど(『白桃』)
○いま少し気を落著けてもの食へと母にいはれしわれ老いにけり(『暁紅』)
○しづかなる午前十時に飛鳥仏の小さき前にわれは来りぬ(『寒雲』)
○うつせみは願をもてばあはれなりけり田沢の湖に伝説ひとつ(『白き山』)

生前and死後併せて十七の歌集が刊行された茂吉ですが、"斎藤編"でも少し触れた通り、歌集の制作時期と刊行時期に大きく隔たりのあるものがあります。

例えば、制作時期としては三番目の歌集となる『つゆじも』が制作されたのはだいたい大正7年から大正10年(1918-1922)ですが、刊行されたのは昭和21年(1946)です。

その一方で、十二番目の歌集となる『寒雲』(刊行年で言えばこちらが三番目)は、だいたい昭和12年から昭和14年(1937-1939)に制作され、昭和15年(1940)に刊行されています。

制作時期と刊行時期に隔たりのある歌集は『つゆじも』だけではなく、この点は斎藤茂吉という歌人の大きな特徴のひとつであるといえると思います。

※上記制作時期については、「茂吉の短歌を読む」(岡井隆、岩波書店)、「鑑賞日本現代文学H斎藤茂吉」(塚本邦雄編、角川書店)、「茂吉を読む-五十代五歌集-」(小池光、五柳書院)に因る。


斎藤茂吉についてはさまざまな著作が出版されているので、以下にオススメの本をいくつか紹介してみます。

「茂吉の方法」(玉城徹、清水弘文堂)
茂吉の人生などを絡めずに、純粋に茂吉の短歌を鑑賞するというスタンスで書かれていて、作歌をする上で参考になる点も多く、読みやすいと思います。

「茂吉の短歌を読む」(岡井隆、岩波書店)
飲食の歌、家族の歌、山の歌などテーマを絞っていて、同時代の歌人である島木赤彦や北原白秋などとの比較もあるので、こちらも読みやすいと思います。

「茂吉を読む-五十代五歌集-」(小池光、五柳書院)
茂吉の日記なども参考にしながら五十代に編まれた歌集を読み解いています。読み解き方がユニークで、面白く読める一冊だと思います。

「斎藤茂吉ノート」(中野重治、ちくま学芸文庫)
茂吉や茂吉周辺に関する考察が的確になされているという点で名高い一冊ですが、最初からこれを読むのはちょっと難しいと思うので、簡単な近代短歌史をおさえてからの方がよいと思います。とても良い本だと思います。

「斎藤茂吉随筆集」(阿川弘之,北杜夫編、岩波文庫)
"短歌を詠むだけが斎藤茂吉ではない"のですが、そんな茂吉の随筆がまとまっているのがこの一冊。この本以外にも随筆の内容が含まれる"茂吉本"というのはあると思いますが、この本は文庫ですし、図書館などでも見つけやすいかと思います。

「万葉秀歌」(上)(下)(斎藤茂吉、岩波新書)
茂吉が「万葉集」の和歌の鑑賞をしています。当然のことのように柿本人麿の和歌も沢山出てきていますが。特に「万葉集」初心者に易しいということもないと思うのですが、茂吉にも「万葉集」にも触れることができて、良い本だと思います。

※斎藤茂吉の短歌そのものについては、「鑑賞日本現代文学H斎藤茂吉」(塚本邦雄編、角川書店)、「斎藤茂吉歌集」(山口茂吉,柴生田稔,佐藤佐太郎編、岩波文庫)、その他斎藤茂吉全集などを参照のこと。


斎藤茂吉は、古典和歌と現代短歌の間の時代を生きた歌人の一人であり、短歌だけでなくその人物像もなんとも興味深い人であると思うので、例えば、斎藤茂吉なんて有名な短歌だけ知ってればいいんじゃない?とスルーしてしまっている方は、もう少し深く知ってみるのも良いのではないかと思います。


それでは、また。
 
posted by 磯野カヅオ at 02:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 和・古 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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