2007年06月19日

「源氏物語」のこと。

「源氏物語」の話は前回イヤというほど書いていたじゃあないか、ですと?ノンノンノン、前回は「源氏物語」を題材にした作品の話だったのですが。

ということで、今日は「源氏物語」の話。
残念ながら「あさきゆめみし」とかは出てきません。念のため。

西暦1000年より少し後に起筆(成立年未詳)、紫式部によって書かれたとされている「源氏物語」。世界最古の長編恋愛小説に位置付けられるこの物語を読まずして「世界の中心で、愛をさけぶ」とか読んでいる場合ではないのです。
※「世界の〜」は原作を読みました。この作品を非難しているわけではありません。ええ決して。

五十四帖(帖=章みたいなもの)からなるこの物語、"とても千年前に書かれたとは思えない現代にも通ずる人間模様が描かれている"みたく、あちらこちらで評されておりまして、それは本当にその通りだなと思います。

人間関係の複雑さについては今さら肯定するまでもないのですが、何が人間関係を複雑にしているかといえば、そう、それは"恋"。
平安時代中期、男女の関係になる際には、強姦(和姦?)という形式がとられる場合も多々あったようですが、実に沢山の恋の花火が打ち上げられては消えていく・・・そんな側面が、この物語にはあると思います。それと下地として在る仏教もポイントですね。

五十四帖の中で特に良いとされているのは「若菜(上)(下)」。物語としては「若菜(上)(下)」の前までを一つの区切りとすることができ、「若菜(上)(下)」はいわば第二部の始まりみたいな部分になるのですが、全体の中でも大きな転換点に当たる帖なので、せめてこの辺りまでは読みたいものです。実際、ここまで読むのはさほど難しくありません、全体の半分辺りのところだし。

でも、それとは別に「玉鬘十帖」とか「宇治十帖」とか、部分的に取り上げられて名付けられた帖群もあるので、"源氏物語ってイイよね"
と言いたいのであれば、やはり一度は通して読むべきでしょう。

ちなみに僕が好きなのは「夕霧」。本筋とはちょっとズレる内容ですが、すごく印象に残ります。現代の話として考えても面白いし、特に男性は苦笑させられる内容なのではないかと思うのだが。

んで、ここで「源氏物語」の詳細を語ってしまっても全く意味がないので(というか語りきれませんが)、今日は「源氏物語」現代語訳本をいくつか紹介してみようと思います。
もちろん、自分が手を出した範囲でしか薦められませんが。僕も、いくら「源氏物語」が好きとはいえ、「源氏物語」ばかり何度も通して読んでいるわけにもいかないので、あくまでもご参考ということで。

(1)瀬戸内寂聴訳(講談社・全十巻)
(2)田辺聖子訳(新潮文庫上・中・下巻)
(3)与謝野晶子訳(角川文庫上・中・下巻)

有名どころばかりで恐縮ですが、この順番に読みました。
ちなみに(2)は途中で読むのをやめて、(3)は(1)を読んだ時に印象に残っていた帖を(1)と読み比べてみました。

(1)は「源氏物語」初心者にはかなりオススメです。読者をかなり意識した文体になっていて、単純に物語の筋を知りたいのであれば、(1)はかなり親切な部類に入ると思います。
例えば、原典では同じ人間に対する呼び名が(突然)変わるところを、(1)ではできるだけ呼び名を変えずに表記してくれています。また、巻頭には人物相関図、巻末には訳者のプチ解説もついているので、理解の助けになります。

(2)を(1)の後に読むと、物足りなく感じると思います。(1)のダイジェスト版みたいな印象。(1)の内容を忘れないうちに(2)を読めば、簡単な復習には使えるのではないでしょうか。"(2)は良くない"ということではなく、読む順番に因るということだと思いますが。

(3)は正統派。河出書房新社の日本文学全集のトップが与謝野晶子訳の「源氏物語」です。でもちょっとカッコをつけて(3)から読み始めると、途中で挫折してしまいそう。(1)で大筋を掴んだあと、(3)で理解の偏りを調整するというイメージで読むとよいのではないかと思います。
例えば"(1)ではやや退屈に感じて読み進めた「榊」という帖にも、案外大切なことが書かれていたんだよね"みたいなことを再確認することができます。

その他では、橋本治訳もかなり読んでみたかった。橋本治が好きな人は橋本治訳でも良いでしょうね、どう訳されるのか気になります。
もちろん谷崎(潤一郎)源氏とか円地(文子)源氏とか、定番は定番としてかっちりあるようですが。

ついでに和歌の話とちょっと絡めてみるならば、「万葉集」が編まれてしばらくした後に「源氏物語」が誕生し、それからだいたい200年後に「新古今和歌集」が編まれたという流れになります。
これらに相関があることは言わずもがなでしょう。

ということで、興味の湧いた方はヒマがあったらチャレンジしてみてください。
posted by 磯野カヅオ at 23:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 和・古 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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